共鳴ラマン分光法によりヘムタンパク質の構造変化を分子レベルで理解する

ヘムタンパク質は生物にとって欠かすことのできないタンパク質です。
ヘムタンパク質の役割は多岐に渡ります。
例えば、私達が細胞に持つミトコンドリア内のシトクロムは電子伝達を担い、ヘムタンパク質の一種であるヘモグロビンは赤血球内に存在し酸素を細胞まで運び、細胞内で発生した二酸化炭素を肺まで運び出します。、筋肉の中にあるミオグロビンは酸素を貯蔵し、体の酸素濃度が低いときには酸素を放出してくれます。クジラやイルカが水中で長いこと潜ることができるのはミオグロビンに蓄えられた酸素があるからだと言われています。

なぜヘムタンパク質は上述したように、多様な機能を発揮することができるのでしょうか?
まず、その理由を理解するためにヘムタンパク質の中核となるヘムについて説明します。
ヘムとはポルフィリンの中心に鉄が配位したものを言います。

heme https://www.sciencedirect.com/topics/medicine-and-dentistry/hemeprotein

普通は鉄の価数は、2価のものをいいます。
3価のものはヘマチンと呼ばれます。
鉄は4つのピロール核窒素と平面で結合しており、平面外にはヒスチジンなどのアミノ酸や酸素分子、一酸化炭素、一酸化窒素などと結合することができます。
ヘムタンパク質のユニークな特性は、ポルフィリンが持つπーπ電子系にあり電子プールとして働くことにあり、これこそが生体内の電子授受やメディエーターとしての優れた機能を発揮する要因になっています。

このようにπ電子共役系が存在すると、光を強く吸収する特徴が生まれます。
特にπ電子遷移による吸収帯をソーレー帯と呼びます。(大体400 nm付近の波長)
このソーレー帯は強い吸光係数を持ち、ヘムを含む血などが赤く見える要因になります。
ソーレー帯だけでなく、480から650 nm付近の波長にもQ帯と呼ばれる分子構造の振動に共役した吸収帯があります。

ヘムタンパク質の吸光を見ると大まかに鉄の酸化還元状態と配位状態がわかります。
より詳細に調べるために有効な分析方法としてラマン分光法があります。
ラマンに使うレーザ波長を先程述べたソーレー帯やQ帯と合わすと共鳴現象が生まれ、ラマン散乱が増強され強いシグナルを得ることができます。
共鳴ラマンの条件では100万倍にシグナルが増幅されるとも言われています。
ラマン分光法の良いところの一つは、細胞のその場観察にも適していると言われている点です。
共鳴ラマンを使うと、ヘムタンパク質の鉄の位置の変化、鉄の酸還元状態、鉄のスピン状態、配位状態を詳細に調べることができます。

すなわち、ヘモグロビンが酸素と結合している運んでいる状態やシトクロムの電子状態を生きた細胞を使って調べることができるのです。


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