ピアノの森を読んで思ったこと

最近、ピアノの森を読みました。この記事にはネタバレが入っているので注意してください。
ピアノの森は作者である一色 まことさんが2005年から2010年の間で書かれた作品で、劣悪な環境で生まれた才能あふれる子供が周りの協力を得て、這い出して一人前のピアニストになるまでを描いた物語です。
この作品のいいところは、絵が詳細に描かれており、必要十分な洗練された言葉で伝えられている点であり、これにより人間の嫉妬、悲しみ、喜び、友情が繊細かつわかりやすく簡潔に描かれています。また、絵の繊細さにより漫画という音のない媒体でも音楽の様子情景がよく伝わり、感動して泣けるシーンも多々有りました。
主人公のカイは森の近くにある田舎の風俗が立ち並ぶようなスラム街で生まれ、ヤクザが多くいる劣悪な日常を過ごします。そのような環境の中で、カイの心の拠り所は森に捨てられたピアノでした。森の中でピアノを弾いているときだけは心が安らぎ、楽しい時間を過ごせたのです。
音楽漫画で有名な『のだめのカンタービレ』はコミカルな要素が多いですが、ピアノの森は感動のヒューマン漫画であり、急成長するカイの姿や師弟関係、友人関係で泣ける箇所が多々あり、とてもおすすめ作品となっています。
主にこの作品は以下の3部構成となっています。
- 森の中でピアノに慣れ親しむ才能ある少年と優秀な先生と出会うことでピアニストになるきっかけを与えられ、劣悪な環境から抜け出す決心をする過程。
- 5年後高校生となった主人公がピアニストになるための下積み努力をする話
- ショパンコンクール国際コンクールに参加して、激戦の末に優勝するまでの話
ピアノの森を読んで思ったことは、天才は努力をしていないということです。
よく天才は99%の汗と1%の才能と言われていますが、この考えは少し間違っていてただただ天才にとっては自分の好きなことをするのが楽しくて、努力などしていないのではないでしょうか。物語の中で、友人の演奏家は主人公をライバル視して努力をして、いつも主人公を意識し、勝とうとします。しかし、いつまで経っても主人公のように独創的で人を感動させる演奏はできないのです。なぜ主人公より努力しているのに勝てないのか?そう考える日々が続きました。しかし、ある時に周りの演奏家たちも同じように、同じ量の練習を積み重ねていることに気づきました。主人公を含め他の演奏家たちは、ピアノが好きで常に前向きに取り組んでおり、努力をしているという認識はあまりもっていなかったのです。
僕自身、学生時代に楽しく自由に研究に打ち込めた時期がありましたが、今は仕事をしているという感覚が多くなっています。初心にかえって科学を楽しんで前向きに取り組んで行きたいと思いました。