経営者と科学者が考えるAIについて: これからの時代は意味づけ、価値付け

新幹線に乗ったときWedgeという雑誌を読みました。その記事にはデータ志向型の経営が取り上げられており、興味を引きました。AIやビックデータは科学の世界でもトレンドであり、職業柄必ず関わります。

僕たち研究者は科学の視点でAIやビックデータがどのように使えるかをよく議論しますが、経営者の視点で考えたことがなかったので刺激的な記事でした。
本日は経営者と科学者が、データ志向型をどう考えているかについて書きたいと思います。

 経営者が考えているデータ志向型に関しては、一橋大学の名誉教授 中野郁次郎(なかの いくじろう)先生と京都大学名誉教授のやまだようこ先生の記事を中心にまとめています。

■ 経営者が捉えるデータ志向型の経営
日本はアメリカのマネをして数値ありきの経営方針に舵を切り、現在の経済低迷が続いていいる。データありきの経営方針のメリットは効率化と最適化が可能な点で、時空間を超えて”いつでも、だれでも、どこでも”使えるマニュアルを作ることができる。
  ビックデータを利用した人工知能(AI)が注目される現在において、重要になるのは現場での経験をもとに得られる知識(暗黙知)であると考えられる。暗黙知を多くの人と議論して、深め、体系化、概念化することが大切になると言える。つまり、経験にもとづく知識から付加価値や意味づけしてストーリーを作り出すことこそが創造と言える。
 これからの企業の体質として必要になるのは下部から中間層、上層部までのコミュニケーションであり、組織の透明化が大切であり、組織の透明化とコミュニケーションの促進なくしてはAI時代に創造することは難しい。

■ 科学者が捉えるデータサイエンス
 ここからは材料化学、電気化学、生化学などを経験した僕が捉えるデータサイエンスに関して書きます。そのため、データサイエンスを開発する側の考えではなく、データサイエンスを使う側の考えになります。

  ビックデータにもとづく人工知能は科学の分野でも注目を集めている分野であり、データサイエンスと生化学や材料科学などの連携が急務となっています。
 データサイエンスが活躍した分野の一つして、DNAの解析などがあります。DNAは生体内での情報ですので、データサイエンスと互換性が良かったのでしょう。また、オミックス(Omics)の研究が盛んに進められいます。

オミックスとは遺伝子情報から生体物質を合成する過程の研究(トランスクリプトーム)、生体内で作られたあらゆるタンパク質の関係を解き明かす研究(プロテオーム)、そして、生物の多種多様な代謝物を網羅的に調べる研究(メタボローム)など生物という複雑な対象物に対して蓄積データをもとに網羅的に解析する方法です。これにより生物種間の関係性はもとより、正常細胞やがん細胞などの違いを理解できるようになってきています。

 材料科学でいうデータサイエンスは元素と材料の特性を調べているのが多い気がします。過去のデータより材料開発を進めるための指針ができて、より良い材料を早く作ることができるようになるでしょう。また、多変量解析により人間がこれまで気づくことがなかった物理量の関係性を見つけることができるようになると思います。ただ、材料系で難しいのはこれまでのデータの統合です。つまり、大くの場合、実験方法が異なるのでデータ統合が困難となります。

人工知能などのデータサイエンスを使うとすべての関係性を導くことができるかと言うとそうではありません。多くのデータを使えば使うほど、また、複雑になればなるほど計算時間もかかるようになります。スーパーコンピューターを使っても何時間もかかる場合もありますし、有限の時間で計算が終わらない場合もあるのです。

そのため、どの関係性を調べればいいのか?どの現象を明らかにしたいか?という目的を持つこと、または、その目的を作ることが大切になります。最近になって科学論文を自動で執筆する技術ができつつあるのですが、一番大切なIntorduction(導入、意義を語る箇所)はAIではかけないでしょう。そのため科学においても、AIが参入した時代に意味づけと価値付がより重要になっていると思います。

■ 経営にしろ科学にしろ、意味づけと価値付が大切
 現在はビックデータを使ったAIが注目を集めています。そのため、今までわからなかっった関係性を解き明かしたり、特徴量を見つけたり、最適化したりすることが可能となってきました。
 経営に関してはデータをもとに最も効率のいい方法を作り出すことができます。Amazonなどのネット販売ではデータをもとに、次に欲しがる商品を予測して、トップページに掲載してきます。AI時代には今まで以上に情報の価値が上がっており、我々が気づかないところでデータが集められています。例えば、電子決済をしたときに購入情報が常に集められているのではないでしょうか。また、レジで我々が買ったものをデータベース化しています。気温や時間帯、季節など多種多様なパラメーターと消費者の動きを結びつけることで効率の良い経営が可能になるのです。

ただ、効率の良い経営は新しいものを創造することは難しいと言えます。新しいものを想像するためには人の経験から感じるものを概念化、体系化することが大切です。

科学においても、実験を行って実際に感じる感覚や意味付け価値付が重要だと思います。特に、データをプロットしたときの傾向から外れたプロットは何かが隠れている可能性があります。また、関連性の低い分野、異分野融合はいまのところ人間が行うべきことです。例えば、サイエンスとアートの融合はまだAIにはできないでしょう。

経営にしろ、科学にしろAIを使って新しいものを創造していくためには、我々が普段感じることが大切で、その体験からの意味づけ、価値付け、そしてそのストーリー展開が大切になります。
AIが人間の感性や感情などを理解するという点でのシンギラリティー(技術的特異点)を迎えるまでは、人間が新しいものに価値を決める必要があるのではないでしょうか。今現在のテーマは”ものからことへ”です。

関連するおすすめの本 (落合陽一さんが多い気がします。)

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